親の『もっと自分と子どもを知りたい』という心を育てたい

Mothers' Earth Spotlight vol.2

川口由佳子さん

 

201610月からMothers’ Earth Communityにて、講師として「子育て」についお伝えしてくれている由佳子さん。親がこれまで持っていなかった「新たな視点」が得られることで、親が変化し子が変わっていく。そんな構成の講座を、計7回にわたり開催していただき、子育てが幸せで楽しくなる家族増やす活動をしてきました。

 

富山県出身。幼少期の2年間をカナダで過ごしたことが影響し、海外で学び暮らすことに興味を持つ。高校卒業後、オーストラリアに渡り4年間、モナッシュ大学教育学部幼児教育学科に在籍・卒業。留学中に夫と出会い、シンガポールに移住。インターナショナルプリスクールにて、5年の現役の教師経験を経て、教師のトレーナーとして活動しています。現在では、シンガポリアンと結婚し、2歳になる娘さんの育児と仕事を両立するスペシャルでパワフルなお母さんです。

シンガポールは「アジア1教育費が高い」と言われる国ですが、由佳子さんの勤める幼稚園はその中でも教育費が高いインターナショナルプリスクールの1つです。基準が金額だけではありませんが、由佳子さんの伝えている教育の水準の高さを物語っていると思います。


 

由佳子さんはなぜ「幼児教育」に興味を持ったのですか?

 

中学生の時にした5日間の職場体験で、幼稚園を選んだことがきっかけで幼児教育に興味をもちました。

 

毎日園児たちと触れ合い、先生のお手伝いをさせていただいた中で「子どもがとても素直でパワフル」だということ、そして「先生という職業は、楽しそうだけれども、大変そう」というのが第一印象。5日間幼稚園でお手伝いをしている間、気づかなかっただけかもしれませんが先生達がトイレへ行くのを見かけませんでした。「トイレに行く暇もないくらい、大変なんだ」ということが、実はとても衝撃的でした。

大学選択の際には、【英語】と【教育】両方を学びたいという思いが強くありました。「語学」よりも「英語でのコミュニケーション」を学びたかった私には外国語大学の英文科は合わない・・・、教育学部に進んでも英語を使うことは難しい・・・、英語の先生になりたい訳でもない・・・そんな葛藤の日々の中、海外正規留学をサポートしてくれる学校に高校卒業後進み、その後海外の大学に留学して「英語で教育学を勉強する」するという選択肢を知りました。「もしかしたら私がやりたいことが全部出来るかもしれない」とワクワクが止まらなかったことを覚えています。

1年間、必死に勉強して、オーストラリアの大学に進学することができました。実際に学んでみると、幼児教育には様々な教育理念・哲学がありました。

オーストラリアの学びのベースは「遊びを通して学ぶ」というもの。その感覚にとても共感しました。そして大学1年次から保育所、幼稚園、小学校と様々な環境で教育実習をこなし、生の保育現場を経験しました。これを通して、幼児教育の奥の深さに気づいてのめり込んでいきました。

 

● 現在の幼稚園で働くことになったのはなぜですか?

 

大学在籍中に入っていた留学生サークルで、現在のシンガポリアンの夫と出会いました。大学卒業後、結婚しよう!と決めたため、シンガポールに移住して働くことにしました。夫に出会わなければ、私はきっとシンガポールという国さえ知らなかったと思います。

オーストラリアは様々な人種の人たちが暮らしています。大学でも、幼稚園でも世界中から移住してきた人たちとコミュニケーションを取る機会に恵まれました。それもあり、インターナショナルスクールで働きたいと仕事を探し始めましたが、インターナショナルスクールで教師になるには2年の経験が必要でハードルが高く、新卒で未経験の私が仕事を探すのはとても大変でした。

駄目元で履歴書を送りますが、返事すらきません。大きいスクールでは経験がないととってもらえないため、小規模の幼稚園に絞ることにし、履歴書を何枚も送ります。それでも日本でいう新卒一括採用という制度など無い海外では、やはり経験がないと職を手にすることはとても難しく、面接にもたどり着けないことがほとんどでした。何枚も履歴書を送った中でやっと連絡をもらえたのが、現在働きだして6年目となるインターナショナルプリスクールです。

オーストラリアにまだいる間に、スカイプで2度の面接をし、先生として働くポジションをもらうことができました。「新卒の先生を採用したのは初めてです」と言われ、壁の高さを思い知ったと同時に、とても嬉しかったです。「このスクールで何としてでも採用されたい!」と思ったのは、もちろん仕事が欲しかったこともありますが、大学の授業で学び、とても素敵だなと感じていた「レッジョエミリア アプローチ」という教育理念をベースにした幼稚園だったから。そして、決まった指導要領やカリキュラムがなく、先生が、子ども達の興味や行動を観察し、日々の学びを形成していくイマージェントカリキュラムで子ども達の成長をサポートする幼稚園。ワクワクすると同時に、不安も大きかったことは確かです。

 

 「レッジョエミリア アプローチ」とは・・・

 イタリアのレッジョエミリアという都市で生まれた教育に対する考え方。子ども達の個々の意思を大切にしながらしながら、表現力、探究心、コミュニケーション力、創造力を子ども達の仕事である遊びを通して養っていく、個々の感性を生かしていく教育。教育者の子どものイメージが大変重要で、子どもをどのような視点で捉え、見るのかで、大人の子どもへの接し方が変わってくるという考え方があります。教育理念の基盤を伝えたローリス・マラグッツィの詩「子どもたちの100の言葉」からも分かるように、子ども達は、100通り、それ以上に自分の気持ちを表現する、そして学ぶ方法を持っているという考えがあり、大人の仕事は、その100通りの表現の仕方を受け入れ、見守り、子どもの成長をサポートすること。

 

● なぜお母さんたちへ子育てについて伝えたいと思ったのですか?

 

レッジョエミリアの教えの根底にある子供の教育への軸は素晴らしいものでした。「子どものイメージ」にこそ、子育ての本質が隠れているのではないか、そう感じました。

子どものイメージとは『子ども』という言葉を聞いてどんな人だと思うかです。かわいい、純粋、やんちゃ、大変・・・色々なキーワードが出てくるかと思いますが、【大人がどのようなキーワードを使い「子ども」を捉えるか】が重要です。

 

子どものことを「真っ白な状態で生まれてきて、常に大人の助けが必要、イタズラや悪さも沢山する」と捉えるのと「可能性に満ちていて、大人のサポートは必要だけど生まれた瞬間から学ぶ意欲がある。一人で考える能力があり、仕事である遊びを通じて、立派な人間として毎日を生きている」と捉えるのでは、大人が子どもとどのように接するのかが変わってきます。どのように声をかけるのかも、変わってきます。

私はお母さん達に、子育ての本質であるこの「子どものイメージ」について知ってもらいたい。そして、自分の中にある子どものイメージを高めた上で、子どもとのコミュニケーションについて学んでもらい、子どもと接してもらいたい。そう思ったんです。

教育を学び、幼稚園で日々生徒と向き合う中で実践してきましたが、自分自身に娘が生まれてからはっきり分かったこと、それは「このとても大切な考えを信念としてもつと、子育てがとても楽で楽しいものになる」ということ。だからこそ、それを是非子育て中のお母さん・お父さんに伝えたいと思いました。

 

お母さんたちは、子供に対してとても一生懸命です。しかし「子育て」は学校で学ぶものではありません。「子どもとのコミュニケーション」も学校で学ぶことはありません。

初めて体験することを、先輩ママや自分の親に助けてもらいながら、手探り状態で日々の子育てをしています。今では、残念ながら助けてもらう機会がないママも大勢います。育児書やインターネットの情報だけが頼りのママが大勢います。分からないことをやっているので、迷いが多いのは当たり前。教習所で車の乗り方、運転の仕方を教えてもらわずに、見よう見まねでなんとなく、運転をし始める、そんな状態での子育てなのです。

 


● 他にも子育て講座はたくさんある中で、由佳子さんだからこそ伝えられることは何なのでしょうか? 

 

私が教える「解決策」は、他の講師や本の中でも教えてもらえるかもしれません。しかし「なぜその解決策がいいのか」という部分までお伝えできる人は多くありません。また、子どものイメージが無いまたは、良いイメージを持っていないと、そもそも育児書などに書いてあるノウハウは通用しないことが多いです。子どものイメージを高めるための視点をいくつも持ち、どうしてこういう場面でこの方法を使ってコミュケーションを取ると良いのか。その根本を知ることで応用ができます。子育ては人と人との関わりです。100人いれば、100通りの価値観があります。各家庭によって子育てに関する価値観は当然違います。親が自分の気持ちを理解し、自分の考えを整理する。その上でその子にとって最適な解決策を、自分で導き出せる思考をつくるのが私の講座の特徴だと思います。

 

私の講座を受けることで「子どもと向き合う深さ」が変わります。それは「自分の気持ちと向き合う時間を大切にしているから」です。「自分が子どもの立場で、こうされたらどう思うか考えてもらう時間を取っているから」です。 

これらを大切にすることで、子どもの心をもっと垣間見ることができます。子どもとコミュニケーションを取るには、まずは自分を見つめ直すことから。そして親のコミュニケーションがうまくなることで、子どもの反応が変わります。お互いにいい関係を築き、互いに成長できるのが子育ての面白さです。

私は「答え」を言うつもりはありません。お母さん自身に「自分の価値観に沿った子育て」を正直にしてほしいと思っています。そのためには人から与えてもらった答えを実行するだけだと、続きません。ご自分の価値観と向き合いながら、子どもとのコミュニケーションで何が大切かを知ってもらうことを心がけています。正解はご自分のなかにあります。「あなたにとってはどうか」を考えてもらうことが大切です。


● 由佳子さんの実現したい未来はどんなものですか?

 

私のミッションは「親が『もっと自分と子どもを知りたい』という心を育てること」Mothers' Earth Communityで子育て講座を開講し始めた後に、私はコーチングを学んだのですが、それもこのミッションに向かっていくためです。自分のことを知ることが、どれほど大切なことなのか、これまで分かりませんでした。しかしコーチングを学び、対自分とのコミュニケーション方法を学び、他人と信頼を築くコミュニケーション方法を知り、他人をサポートするコミュニケーションとはどういうものなのかを学んだことで、ますます「もっと知りたいという心を育てる」ことの大切さを実感しました。知らなくても良い、今のままでも良い。そう思う人もいるかもしれません。しかし、私が、高校卒業後の進路を迷っていた際に、英語で教育学を勉強する道があるということに、気づかなかったら・・・知らなかったら・・・。今の私はありません。

 

「知る」ことで視点が広がり、自分の世界が広がります。自分の視点が広がって、選択肢が沢山あって、初めて自分に最適な方法を見つけることができます。選択肢が沢山あることで、失敗することも多いかもしれない。でもその数だけ、成功するチャンスもあります。その数だけ、幸せな生活を送るためのヒントが隠れているかもしれないのです。自分と子どものことをもっと知る機会を作ることで子どもと幸せな毎日を送ってもらう人たちが増える。それが私の実現したい未来です。

 

● 由佳子さんにとって幼児教育とは?

 

世界の原点」です。親がもっと子どものことを深く知ることができれば、これから成長していく子どものためにもなるし、彼らが暮らす社会、世界のためになると思います。親がもっと、子どもの可能性、自分の可能性を信じることができれば、世界が平和になっていくのではないかと思っています。

 

これからの時代、情報はどこにいても手に入る時代です。必要なのは、情報を分析し、自分の頭で考えて、新たな考えを生み出す力。人との関わり、コミュニケーションの力を強化して、世界をより住みやすい場所にしていくこと。 

私たちが、日本で受けてきた「子どもに情報を与える」ことを重視し、記憶力を伸ばして正解を覚える教育ではだめだと思います。どれだけ、子ども達が自分の中にある考え、正解のない答えを表現力豊かに、自信をもって他人に伝えていくことができるか。これが鍵になると思います。

私が勉強をしたオーストラリアでは、とにかく間違ってもいいから発言をし、自分を表現していかないといけませんでした。自分を自分にとって心地よい方法で表現していくには、やはり、コミュニケーション力が必須です。

そういった意味で、これらを育てていくために、いかに幼児教育が大切な役割を果たしているのか、想像ができるのではないかと思います。

 

 

● 由佳子さんはどんな人間でいたいですか?

 

常に向上心を持って、新しいことにチャレンジする勇気を持つこと。こんなこと言っていますが、実は家にいることが大好きで、何もしないことも大好きだったりします。怠けることも好きだし、ぼーっとすることも好き。人見知りで、新しく出会う人とお話するのは、苦手。でもそんな自分を認めながら、自分の価値観を追求していく人でありたい、正直でありたいと思います。そして常にワクワクしていたい。

過去の選択を振り返ってみると、私は「どの道に次進めばよいのか」決める時は、自分のワクワク度で決めていたことが分かりました。迷った時は不安があっても、ワクワクする方を選ぶ。ワクワクする選択肢が無かったら、ワクワクする事柄が出てくるまで、視点を広げ、選択肢を広げる。それを忘れたくないです。シンプルに、自分の価値観に正直にワクワク過ごすことが私の幸せです。

 

由佳子さんとってマザーズアースコミュニティーとは何ですか?

 

高い意識を持った素敵なお母さんの集まりです。みんなそれぞれ「子どもと過ごす時間を少しでも良いものにしたい」そんな想いが溢れている人達の集まり。良いエネルギーが循環していて、講義をする立場の私は、毎回参加者の皆さんから新たな気づきとパワーをもらっています。

お父さんからのパワーもいただけるので、お母さんに限らず、お父さんも積極的に講義に参加してほしいなと思っています。男性の目線・考えというのは、女性と違う部分が沢山あって、私はいつも、ドキドキしながらも、新しい視点をいただけることを楽しみにしています。

子育ては、お母さんとお父さんがチーム一丸となれた時に、さらに良いものになるのではないかと思っています。学びたいという意欲がたくさんあるお母さんたちをサポートするお父さん陣も素敵だなと思えるコミュニティに成長していってほしいと感じています。

 

私はこれまで、このような形で講師をするということは考えたことがありませんでした。それがこのコミュニティーを運営するの安田菜穂子さんとのご縁で、いま講師として皆さんの前に立たせてもらっています。講義の企画、告知、集客、そして講義後のフォローアップのサポートがあるおかげで、毎回の講義の準備もとてもスムーズに行うことができます。皆さんにお伝えする内容を作ることに集中できて、なおかつ当日は参加者の皆さんとお話しすることに力を注ぐことができる、そんな場となっています。自分の強みを生かし、講師としてこのような形で社会に貢献できる機会を頂いたこと、コミュニティのいちメンバーとしても参加させていただけることに、感謝をしています。

 

由佳子さん、素晴らしいお話をありがとうございました。これからの活躍も応援しています!